写真家 新正卓 ARAMASA SAKURA

ARAMASA SAKURA  -English-

 

 

ARAMASA SAKURA サンドラ・S・フィリップス

 

ARAMASA SAKURA

ARAMASA SAKURA in black box

 新正卓による、これら一連の美しい桜の写真は、じつに新鮮で創意に富んだものである。日本文化を敬愛しながらも外国に住んでいる私たちのような人間にとって、これらの写真は、私たちが「日本」であると認識しているものを象徴している。これらの写真の中の桜は華麗で生命力にあふれているが、もろくまたどことなくもの哀しい。主題が桜の花である、ということは大変重要な事である。それというのも桜の花を大事にするのは、日本国民の強迫観念(妄念)でもあるからだ。日本では毎年、桜の開花が近づくと、新聞には開花した場所の地図が載り、全国ネットのテレビ局の番組では、天気予報のコーナーの中で、必ず桜が話題に上り、南から開花して徐々に北上するにつれて、いつが花の見ごろなのかが注目されるのである。

 1930年代から1945年、ようやくの終結までの軍拡の時代、日本の支配階級は古代の神道を政治の道具とした。東京にある靖国神社はその大戦で有名になったが、国の軍事的野心に殉じた兵士達にとっては必要不可欠な記念碑だった。靖国神社のさくらは、豊潤で優美だが、国家の権力への夢に奉仕して死んだ若い兵士達の短くも美しい人生を象徴しているのである。戦争以来、いや、それ以前から、もろくはかない桜の花は広い意味で日本文化であると見なされてきた。それは、複雑な変化に対する解説や、そこからの解放としての美への礼賛や自然への深い信仰を反映したものなのである。

 新正の写真はピンホールレンズによって制作されている。それは通常のレンズとは違い小さな穴を通ってカメラの中に入る光の小さな光源によって作り出されるのである。最も基本的で原初的なカメラの映像であり、現代写真へと発達する光学や科学へと繋がる現象である。先人達はこの光の点が暗い部屋の中で、反対側の壁に外の光景を出現させることを知っていた。プラトンの洞窟の影の姿はそのような表現であるかもしれない。この原初的な方法論はしかし、ピンホールに固有の空間的なゆがみや、その光のほの暗さを評価し強調する、洗練されたアーティスト達によって使われてきた。さらに特徴として、魔法の様な感覚や亡霊のような感覚をともなう。先人達には特にそのような印象が強かったことであろう。全体的であるうえに非常に個性的である。

 

ARAMASA SAKURA

ARAMASA SAKURA in black room

 新正は才能に恵まれた著名な芸術家である。彼の写真における興味は主に、国として文化としての現代日本を理解しようとする事におかれている。以前の作品では中国、南アメリカ、アメリカ合衆国へと渡った日本の移民を撮影した。先の大戦中日系アメリカ人が生活していた、今は寂れた居留地の写真は、誠実さや人間性を現している。近作では日本の海岸線を撮影した写真を制作している。これらの写真は、毎年繰り広げられる自然の恩恵を、じっと見つめ、敬意を払うという日本の古来からの儀式にのっとった写真なのであり、同時に、日本文化に対して、過去と現代に対して、別の形で質問を呈しようとしているのである。

 

サンドラ・S・フィリップス
San Francisco Museum of Modern Art 主任 キュレーター

 

(日本語訳:青木香織)

 

 

 

ARAMASA SAKURA in black box

 

 

 

ARAMASA SAKURA in black room

 

 

 

写真批評 大嶋 浩